スイスの学校を選ぶ時の判断基準はそれぞれです。立地や学校の規模、学べるアカデミックプログラム、卒業後の進路など決め手となって出願する方も多いでしょう。以前のコラムで立地やアカデミックプログラムについて述べましたが、私が職員としてまたエージェントとして働いていると、日本の皆さんは卒業後の大学の進学先を特に気にされている方が多いと思います。もちろん勉強に力を入れておらず進学先も聞いたことのない大学ばかりだと高い留学費用を払っても、と不安になるでしょう。

スイスのボーディングスクールでは直近の年の大学進学先(もしくは合格先)一覧を過去数年に亘って発表しています。しかしそれだけで志望先を決めるのはお勧めできません。また国際バカロレア(IB)のディプロマ認定試験の最高点や平均点のみで判断するのもお勧めできません。何故かというと進学実績のハーバード大やスタンフォード大など世界で名だたる大学進学の合格実績があっても出願者は多くなく、ほとんどの合格者は英語を母語にしている生徒さんです。また複数の大学に出願するのでそれらの大学に進学するとは限らないからです。またディプロマ試験の結果も、最高点や平均点より合格点に達している割合の方が重要です。この割合が低いとIBカリキュラムの指導実績が低いということが考えられます。

もちろん両方とも判断基準になりますがそればかり見ていると一番大事な学校生活の中身、たとえば世界中から集まった生徒さんと繋がったり、スポーツや課外活動を通じて成長したり楽しんだりすることが(本人にとっては)後回しになってしまうことが起こり得ます。私が職員だった時、日本人ではないご家族や生徒さんは卒業後の進路やアカデミックプログラムより課外活動やアクティビティーなど勉強以外のことを重視している方が多かった印象があります。

翻って日本人の生徒さんに多かったのは、課外活動やフィールドトリップやスキーの時間でも勉強道具を持って行って時間の許す限り勉強をしていた生徒さんがいました。共通しているのは成績がとても良いこと、先生からの評判も良いこと、しかし(特に外国人の)友達の輪が狭く、たくさん友達を作ろうという姿勢ではありませんでした。ただ私はその生徒さんたちの寮生活までは見ていませんでしたので、もしかしたら間違った認識を持ったのかもしれません。

しかし学校生活を数年過ごし卒業式を迎えた時、すべての生徒さんの学校生活がどのようだったか垣間見ることができます。前述の勉強ばかりで良い大学に合格し、学内からアカデミックに関する表彰を受けても卒業証書授与の際は拍手や歓声がまばらだったり、ほとんどない事があります。逆もあります。成績は芳しくなくても名前を呼ばれた瞬間、拍手と大歓声に包まれる、そうした生徒さんは英語力を抜きにして社交性が高く男女や国籍問わずたくさんの友達に囲まれていました。

高校卒業後の進路ももちろん大事ですが、同じ時期を過ごした同級生や他学年の友達は一生の宝物になります。友達もたくさん作りそして勉強も頑張り良い成績を取る、という両立は難しいですが、せっかく世界中からの生徒が集まるスイスの学校に留学しているのですから目の前の勉強と将来の進学先を気にするだけでなく寮生活や課外活動などを通じてたくさんの友人を作るのが学校生活を楽しくする手段になるのではないでしょうか。