よく留学中に英語や他の言語を集中して勉強するので、日本語はどうするのか?というご質問を受けます。第6回はスイス留学中の日本語についてです。スイスの学校では日本語のクラスを設けている学校はほとんどありませんので(日本語に興味がある生徒に語学クラブを開いている学校はあります)、やはり自ら日本語の本を持って行ったり、帰国したらテレビのニュースや新聞を読むなど日本語力の維持に努めなければなりません。
世界的に認められている高校卒業資格、IB(国際バカロレア)プログラムには母国語の本を読んで課題を仕上げる、という教科があります。多くのスイスの学校もIBのカリキュラムに力を入れています。その中にSelf-Studyと呼ばれる科目があります。これはIB協会が指定する本を3冊選び、それについて論文を書いたり、担当試験官の前で作品について述べたりします(オーラルテスト)。従って学校や履修するアカデミックプログラムによっては英語や他の言語に集中すれば良い、という訳ではありません。
よく英語などの語学は早いうちから始めるのが良い、と仰る方を数多く見かけますが、母国語である日本語をまずしっかりと学ばさないと将来大変なことになり下手をするとどの言語も中途半端になる、ということにもなりかねません。
今となっては笑い話になりますが、スイスの学校の職員1年目にサマースクールに到着する日本人生徒さんのお迎えにジュネーブ空港に行きました。当時学校は8才(現在は10才から)から生徒を受け入れていました。到着した生徒さんの中に8才の男の子がいて、挨拶した後にいきなり「おい、おまえ」と声を掛けられました。私は一瞬戸惑いびっくりしてしまいました。もちろん本人に悪気はなく、他の生徒さんにも同じように声を掛けていました。彼は英語の方が流暢だったのでインターナショナルスクールに通っているか、海外在住だったのかもしれません。とてもフレンドリーで当時のサマースクールの先生、職員からは大好評でした。私は色々な話をしてくる彼には一切嫌な気持ちはしませんでしたが、大きくなったら大丈夫かな? などといらぬ心配をしてしまいました。
また別の生徒さんですが、高校生の時その生徒さんは新聞に普通に使われている漢字を読めなくてよく私にところに聞きにきたことがありました。
日本語は難しいです。日本に帰国する時は家で使っているから大丈夫。留学中も日本人のお友達と話をしたり交流があるから心配していない、と仰る方もいらっしゃいますが卒業する時には高校3年生になっていますので、やはりそれ相応の日本語レベルを持っていることが大事です。
最初の話に戻りますが、学校によってはIBの日本語を専門に教える先生が常駐しているところや外部の専門講師を雇って日本語のサポートを手配してくれる学校もありますが、クラスだけでなく学校で学びながら母国語を疎かにしない留学生活はとても大事です。留学中は英語(もしくは他言語)のみ頑張っていれば良い、と考えないようにしましょう。