第5回はアカデミックプログラムのちょっとした裏話についてです。スイスの学校では各学校特色のあるプログラムを用意していて、学校によっては最終の卒業資格を何のコースを履修するかで選ぶことができます。スイス・スタディーで取り扱っている学校で有名なのはUS High School Diploma, AP(Advance Placement), IB(国際バカロレア)、A-Level などです。フレンチバカロレアやスイス・マテュリテを取得できる学校もありますが、これはそれぞれフランス語、ドイツ語をネイティブ並みのレベルが必要なため、日本から留学する生徒さんにとっては馴染みが薄いです。
さてこのコラムでは最近日本でもよく聞くようになったIBについて取り上げます。IBは世界120カ国以上に認められている共通の国際的な教育プログラムで修了すると高校卒業資格が得られます。世界中の大学から認められているのでこの資格で受験が容易になります。スイスの学校で職員になった1年目、学校側がこれから入学を考えている生徒さんや保護者に、「IBコースを履修してDiploma(卒業資格)を取得すれば素晴らしい大学への進学できます!」 と盛んにアピールしていました。より高いレベルの大学へ、と探していらっしゃる方にはうってつけのアピールポイントです。
しかし学校側はIBプログラムについての紹介をしますが、これがどれだけ難しいプログラムか(内容によってはアメリカの大学レベル)、コースの履修と最後のDiploma認定に掛かる費用(授業料には含まれていないもの)、またコースの履修をやめると、それが成績証明書に書かれ印象が悪くなる事、などの説明はしていませんでした。また当時の生徒さんの保護者の方にお会いした時には皆様口々に「IBプログラムは取らないといけないものだと思っていました」とお話されていました。
私の学校に限らずアカデミックプログラムをアピールする時、当たり前ですがマイナス印象を与える事はあまり伝えません。IBに限らず他のアカデミックプログラムもレベルが高く、これから入学する生徒さんの英語力が備わっていないのに関わらず未来の話を前提にIBプログラム履修を勧めます。学校としてはIB(やそれ同等の高度なアカデミックプログラム)を履修している生徒さんが多ければ学校の格が高く見られます。
よく皆様にIBについて聞かれますが、このプログラムは高校2年生から履修の場合、1年目より2年目の方が遥かにハードです。自信があり、やってみたいという生徒さんにはお勧めしますが、「学校やご家族が取りなさい、と言っているから」という中途半端な理由であるならば無理な履修を目指さず自分のできるレベルで各教科を履修し、良い成績を修める方が大学側の印象も良くなります。学校側の一方的に勧めるプログラムだけで判断せず、そのプログラム以外はどんなオプションがあって卒業を目指せるか、またIBを含めどういった履修コースがあり、どのレベルの大学が目指せるか、そうして情報収拾はとても大事になります。ただし指定のIBカリキュラムを履修しないと出願できない大学もありますので将来進みたい大学や専攻がある場合は予め調べておく必要があるでしょう。