前回の第3回体験記では一般的な志望校選びについてのお話をしました。

「よく調べないで入学したら思っていたのと違った」というのはなにもスイス留学だけで起きる事ではありません。別のことで「こんなはずではなかった」というのが起こり得ます。
例えばアカデミックプログラム。「〜を勉強したくて入学したのに初歩的なレベルのクラスしかなかった」という話も実際にありました。よく私が見聞きしたのは、主要教科よりも音楽や美術などの芸術系の科目が充実していない、在学中はサッカーやテニス、乗馬などのスポーツに力を入れたいのに高いレベルがなかった、という話です。こういった特定の分野があると学校は謳っていたので入学したのに、実際は思い描いていた活動ができなかった、というの事があります。他にあった事例をいくつか紹介しましょう。

・バイオリンやピアノなどの楽器を専門的に学びたかったが、クラスはなく外部から講師を呼ぶしかなく別途費用が掛かった。
・ダンスをしたくて入学したのに体育にも部活にもダンスがなかった。
・デジタルアートを勉強したかったのに学校にそもそも機材が備えられていなかった。
・山の上の学校だから乗馬を楽しみたかったのに村にある規模の小さな乗馬施設の観光客向けのプログラムしかなかった。

などです。上記は私がスイスのボーディングスクールの職員だった時に見聞きした話ですが、生徒だった時も他の友人から同様の愚痴を聞いたことがあります。

こうした学校が提供している教科やプログラムや部活動の有無を知ることはとても大事です。それ以外にも立地、学校の規模(在校生徒数や1クラス辺りの人数)、在籍生徒の国籍数、卒業後の進路、など進学先を決めるのに必要な情報は多岐にわたります。

どんな事柄でも準備を進める上で大事なことですが、その中でも立地を軽視する方が意外と多いです。おそらく「勉強を頑張って卒業し、良い大学に進学してくれるだけで良い」と、日本の進学校的な考えで学校を選ぶ方が多いからです。しかし学校の立地は勉強の意欲にも影響してしまいます。ヨーロッパの街並みを期待して入学してから「え? こんな山奥の田舎でこれから学校生活を送るの?」「学校の周りには何もない!」では遅いです。もちろんそういう環境を望んで行かれる方もいらっしゃいます。

私は先の体験記で述べたように当時進学先を決める際はレザンアメリカンスクールしか知りませんでしたが、この仕事を始めて数多くの学校を訪問して思った以上に都会にある学校や逆に学校の周りに小さな個人商店が一つしかない、など学校の立地にびっくりした事があります。もし希望の学校がある場合、(現在はコロナ禍で難しいですが)車や電車でその学校に行ってそのまま帰って来るのではなく学校周辺を散策する事を強くお勧めします。「生活必需品が買えるスーパーやお店が徒歩圏内にあるか?」「学校の周りにどんな施設があるか?」などは実は勉強すること以外にも学校生活を送っていく上で大事なことです。ただ学校が山奥の田舎でも店があれば「(娯楽が少ない分)かえって勉強に集中できる」という利点があります。また大きな町にある学校だと「徒歩圏内に色々買い物が出来て便利」という利点がある分、「誘惑が多い」という欠点もあります。学校の周りの環境も訪問した際に自分に適した環境かどうか出願する前に考慮に入れておくと良いでしょう。