前回のコラムでは盗難被害について書きました。それ以外にも多くの保護者や生徒の皆さんは留学中に興味本位でお酒やタバコに手を出してしまうのではないかと心配なさいます。この二つを見聞きするとスイスの学校に対して悪いイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかしお酒もタバコも国によって制限年齢が違います。たとえばスイスの飲酒事情は州やアルコール度数によって法律が違いますが、16歳もしくは18歳と定めています(タバコも同様)。この第8回ではこの飲酒について取り上げたいと思います。
日本の高校ではあり得ないことですが、高校3年生になる18歳になると、学校から保護者宛にお子様にお酒を飲ませて良いか? と許可の有無を聞かれます。これは学校が飲酒を勧めているのではなく卒業前にイベントやパーティーでお酒が振る舞われる機会があり、一人の大人として扱われお酒の嗜みや社交の場を経験させるという意味合いがあります。宗教上や健康上の理由がない限り保護者の方々は学校側に許可を出します。
学校では1度のイベントで飲む量は決められていてほとんどの学校ではその都度呼気のアルコール量を調べて違反生徒は罰則が課せられます。私も高校3年生の時に飲酒の許可を両親からもらいましたが、学校でのイベントで少し飲んだだけで気分が悪くなりその場にいた先生に介抱してもらうという失態を演じました(もちろんアルコール量の違反なし)。これにより私自身がアルコールに弱いことを知りました。
さて飲酒年齢について触れましたが、一つ絶対に注意しないといけないことがあります。それは自分の飲酒ではなく、飲酒年齢に達していない(もしくは許可を持っていない)のに飲酒をしている友人と一緒にいることです。これは本人が一切アルコールを口にしていなくても先生や職員に見つかると罰せられます。
私の実体験ですが、スイスの学校ではなくアメリカの大学の寮で友人の誕生日パーティー中に寮の職員に見つかり罰せられたことがあります。アメリカの飲酒年齢はほとんどの州で21歳です。当時私は大学1年目の18歳で飲酒はしていませんでしたがお誕生日をお祝いした友人は22歳になり、寮のダイニングルームではお酒の瓶が何本か置いてありました。他の同学年の友人と共に捕まりましたが、その理由は「お酒を飲む年齢に達していない学生がいるのに飲酒を止めなかったから」でした。罰則は反省文でした。
こういった事例はアメリカでの話だけでなくスイスでも同様の理由で罰せられる可能性が高いです。実際スイスの学校でも同様の理由で罰せられた生徒がいました。海外の学校では本人の飲酒の有無に関わらずその場にいる他の生徒も含めて飲酒年齢に達しているか、許可をもらっているかの方が重要になります。従って「飲んでないから自分は関係ない」という言い訳は通じません。
また罰則ではないですが、スイスから学校の旅行でイギリスに行った際、友人の18歳の誕生日を祝うために夜遅くにパブに皆で行きました。しかし入口で17歳の為パブに入れませんでした(当時その街でパブに入れる年齢は18歳からでした)。足止めされている間に他の友人が入口の係の人に彼のIDカードを見せ「問題ない。彼はあと15分で18歳になるから」と説得して、その場で待ちました。説得の甲斐もあり午前12時に日付が変わると皆でそのパブに入ることができました。このようにスイスでも他の国でも年齢をまず確認されます。その後に滞在先のホテル(学校旅行)や寮に戻るのならば呼気のアルコール量も確認されます。
学校の行事で飲酒、という事は日本では考えられないかもしれませんが、年齢に達するとそれなりに大人として扱われお酒を嗜む機会がある、ということを事前に知っていれば高校3年生になる時に許可を出そうか出さないか戸惑う必要もありません。学年が上がる前に各ご家庭でどうするか話し合っておくと良いでしょう。